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◆第3回 日輪の劇団

日輪の劇団
【タイトル】
日輪の劇団
【開発環境】
RPGツクール2000
【作者】
今曰花
【作品公開ページ】
こちら→

ロールプレイングアクションRPGサウンドノベル
アクションシミュレーションパズル・テーブル
シューティングレース・スポーツその他
【作品紹介】
物語の舞台は17世紀、南フランスはプロヴァンス地方。 劇団日輪はモンペリエの町へ公演にやって来ました。 はてさて、どうなることやら。

芝居を作って遊ぶゲームです。 お好きな言葉を入力して、素敵な芝居にしましょう。 ヘンな言葉を入れるとヘンな芝居になります。 でもまあいいや。
(作者)

【レビュー】

風見鳥

シュール。雰囲気作りについて特筆すべきものがあります。

独特の言い回しや固有名詞を使うこと、キャラの口癖、セリフを噛むキャラクター、一部の人にしかわからないようなネタを用いることなど、 細かい気配りから成り立っている雰囲気です。一挙手一投足を巧みに表現されていて、思わず唸るところです。素晴らしい。

メインは脚本作りのようです。言葉を入力で作らせるのは、自由度が高くて面白い発想です。 そして何より、自分で考えなくてもいいというのが作者にとって嬉しい構成です。プレイヤーにバランスを取らせる、まさにヘルドア的。 ひとつ、最大の見せ場である開演前に、セーブを促すようなお知らせがあっても良いかもしれません。私が引っかかったのはその点だけでした。

さて、しかしこの作品はRPGツクールでなくても製作することができると言えます。マップやキャラ作りなどが楽だから、 というところはひとまず置いておいて、脚本をプレイヤーに作らせるというメインチップ製作は他のツールでも可能です。 そして、極端に言ってしまえば、このメインチップ部分そのものもプレイヤーの発想が関与するといえども、 ネタとして扱われているようにも見えます。

作者様の指定ゲームジャンルが、その他になっていることにお気づきでしょうか?なんと、この作品はある意味ゲームでは無いのです。 寸劇です。これは良し悪しについて言っているわけではありません。これも一つの表現技法である、ということです。しかしながら、 せっかくのRPGツクール。これだけの技力があるのなら、本格RPGの一部として、この能力を存分に発揮できたら……!と思いました。

昨今、RPGツクール自体をネタにした、何か不気味な作品も増えているという噂も耳にします。 RPGツクールで何を作るかについて強制するつもりはさらさらありませんが、RPGと呼ばれる作品が少ないようではツールが泣きます(多分)。 何か微妙な一発ネタ作品ばかりつくっていて、ぱっとしないなあ、というクリエイターの方は、 ぜひこの機会に正統派RPGを作ってみてはいかがでしょうか?

最後に。少しネタバレになりそうなところではありますが、最後の絶妙な分岐。 これは、分岐自体の難度バランスもさることながら、そのあとの展開がどちらとも申し分なく、お見事でした。 終わり良ければ全て良しと言いますが、私もフィニッシュは作品評価を決める上で非常に重要な要素だと思っていますので、 劇の閉幕に拍手を送りたいと思います。

作者様のウェブサイトにあるマンガも引けを取らずシュールなので、興味がある方はぜひどうぞ。


川ノ道

「このバイオリンのおかげで私はザンギエフにはならないのだ」

「ならばサナダムシを食わせるまでよ」

アイデア作品である。サナダムシ、バイオリン、ザンギエフのような単語をゲーム中に入力することによって 劇中の台詞が上のように変わっていく。そういう面は非常に面白かった。音楽やキャラクターグラフィックについても申し分はなく、 装備を変えるとキャラクターグラフィックが変わるといった面白い面もある。装備を変えてもパラメータが変わらないがもはや「着替え」と 装備の名前がなっているので変わらなくてもなるほどと思う。

ただ、1〜4幕まであり、わりと多くの劇中の台詞を入力するのだがそれにしては劇があっさりと終わりすぎじゃないかという印象が残った。 無論、入力する単語の整合性といったこともあるだろう。おかしな単語でも物語の流れとビシッと合えば非常におかしな物語となりとてもおかしくなり、 あわなければそのむちゃくちゃさで笑う。そういう点ではまさしくプレイヤーの腕が試されているようで良い。 しかしそういったメインの劇部分であるのでもう少し時間をとり、盛り上げてもよかったのではと思うところではある。

しかしこの作品そういったシステムとは別に世界背景の使い方が良かったと思う。 ゲームという仮想の世界の中で、現実のフランスが舞台であるとか昔疫病が蔓延したといった事実を盛り込むことで 仮想の世界をプレイヤーがある程度補間することができるのではないか?と思わせてくれた。


彰秀

日輪の劇団は(株)エンターブレインが発行する雑誌、テックWINで行われたコンテストで銅賞を獲得した ドラマティック・シナリオ・メイキングRPGである。当然のことだが前回のミーアの(略)同様に自称創作者の端くれとして思わずハンカチを噛みしめ、 こんどはステップアップして下唇まで噛み切り、すぐにそれをコーヒーへ吐き出して悔しさを表現したくなりました。 ま、そんなことをするのは髭のOLだけで十分なので仕方なく辞退しておきますが。

さて、そんな与太話はこの辺にしておいてと言うか、毎回こんな始まり方ってどーよ? と他人の意見を求めてしまいたくなるのですが、 そうやって他者が介入することで自分の持ち味を、例えば失敗したカレーのような味わいに近い自分の持ち味を、 殺すことは俺と言う人間のアイデンティティを奪う行為に他ならない……!!

そんな被害妄想全開のままレビューに移ろうと思う。

本作は一応はRPGと言う形態で発表された作品なのだが、実質はアドベンチャーゲームに分類されるべき内容だと言える。 と言うのも、フィールドを移動しての探索要素が低いことと、戦闘があってもなくてもどうでもいい程度の作りだからだ。 そういう訳でRPGとしてこの作品を評価するならば底辺と言う言葉が相応しい。実に実に。

だが、この作品にはそんなことは些細な問題だと思わせるほどに素晴らしい所が三つある。 一つは脚本である。この作品の脚本は大変よく書けており、同じレベルの作品などツクール作品からはそう見つからないだろう。 一般のゲームと並べても見劣りすることは決してない。ただ、それはこの作品が短編だからで、長編になれば破綻する可能性というのもある。 だが、それでも違和感もなく自然にキャラクターを表現しているこの脚本は一読する価値はある。

二つめはプレイヤー入力方式による劇の脚本作成だ。 これの特に素晴らしい所はプレイヤー側にはどのようなシチュエーションで使われるかを最低限の情報しか与えないことだ。 これにより実際に劇が演じられる際、意外性満点の展開を楽しむことができる。もちろん制作者のアイディアと、 どこにどの台詞を当てはめるかのセンスの良さも評価に値するが、このプレイヤーに伏線を貼らせるという構成こそがもっとも素晴らしい要素だと思える。 ま、一発ネタに近いものなので二回やろうとは思えないシステムだが。

そして最後は制作者が得意な要素以外にほとんど手を出してないことだ。人間というのは当然得手不得手というものがある。 ま、それ以前にRPG制作というのは一般のゲームなどを見る限り基本的に大人数での制作が常識になっている。 それをアマチュアは個人、あるいは少人数でやることになる場合が大半である。 となるとどうなるか? 当然できあがりは市販の作品に比べれば劣る物になるのが大半だろう。 だが、この作品の場合は得意である脚本のみに一点集中することにより、その要素だけは高い水準に達することができた。 例え見た目がボロボロであろうとも、一点、ただ一点においては比類無き(誇張アリ)作品を完成させたのである。

一点豪華主義。これがアマチュア制作者にとって重要なのはツクール製作品ではないが、 「月姫」や「ひぐらしのなく頃に」を見れば分かるだろう。 まぁ、だからと言って上下ユニクロのジャージだけど財布はグッチというファッションセンスを肯定している訳ではないことは分かって貰いたい。


微風

(*讃岐版をプレーしました。)

個人的には、「アマチュアだから作れる、もしくは作るべきゲーム」の一端を垣間見た気分でした。 儲けを追求した商業ベースの作品からは絶対に出てこない面白さと暖かさが含まれています。 ですので、今回は敢えて、他のレビュアーの方が触れない様な視点から切り込んでみます。

そのために、少々話はゲームから遠ざかりますがご了承下さい。

昔、我が国では、子供の想像力を育むために、 親が昔話の本を読ませたり、自作の話を寝る前に聞かせていたという時代がありました。

しかし今の日本では、その習慣が続いているとは言い難いです。 インターネットの利用者が低年齢化していることなどに見られるように、大人がそういった習慣を放棄して、 子供たちに道具を与えて育児の世話を軽減しようと考える場合が多くなったからでしょう。

この作品は、非常に読みやすく遊びやすく、 そんな経緯で増えてしまった「暖かい物語に餓えた子供たち」に光明をもたらすと思います。

皆さんもご存知の通り、現状のゲーム業界(家庭用・PC用・フリーゲーム全て含めて)には、 しっかりとした「子供向け」のゲームがありません。 子供が親に道具としてゲームやPCを与えられる機会が増えたにも関わらず、です。

例えば、このゲームに類するアドベンチャータイプのゲームは漢字の読みや言葉の意味など、 ある程度前提となる知識を要求されるものが9割です。 敵を倒しながら進めるタイプのゲーム(RPG、アクション等)も、 10代後半〜30代をメインターゲットとして作っている場合が99%位でしょう。 ポケモンやスマブラなどは幼い子供にも人気ですが、ただ単にキャラがかわいい(かっこいい)だけで、 物語の中に感動があるかと言われると、ありません。 その世界で得た知識や情報はその世界で完結している非生産的なものです。 (*ポケモンやスマブラの存在自体を否定はしていません。ゲームのシステムとしては完成されていて、  1日30分程度息抜きにやるには楽しいと僕は思っているということも付記しておきます)

ですので、製作者の方が意図したかはわかりませんが、 ユーモアと、暖かい素朴な感動をたっぷり含んだシナリオは、 幼稚園〜小学生位のプレイヤーに遊ばせるのに特に向いているのではないでしょうか。

昔の絵本の読み聞かせにあたる様な 「子供が遊んだとき、楽しいという快感に加えて、実生活にも役立つ何かを学ぶことができる」 それに加えて 「親があまり手間をかけずとも遊ばせることができる」 という一石三鳥の様な遊びの文化が、まさに今、我が国で必要とされています。 このゲームは現状でもそういったものになりえます。

今まで、例えば「侍魂」や「絶望の世界」の様に、ネットから発生した面白いストーリーが (日本の全人口ではないにしろ)ネットをしている何人かの人生や価値観に衝撃を与えたということがありました。

この日輪の劇団の様な、素朴な意味で面白い作品を他にも作り、 ツクール製という性質を宣伝時は薄めて、前述の様に子供向けというアピールを行えば、 間違いなくネット上で何か一波乱起こせますよ。 もちろん、いい意味での波乱です。

作る人は作者の今日花さんに限りません。 このレビューを御覧になった人で、 「何か作りたいけど明確な目標がない」 という方には是非お願いしたいです。 時たま感想掲示板や攻略掲示板の類を覗くと、 今でもツクール製のゲームを遊んでいる幼稚園児や小学生もいるようなので、なおのことです。

最後に、個人的な感想も一応少々述べておきます。 プレイヤーが入力した言葉を元に劇が作られる、という発想がとても面白かったです。 言葉を入力するときにはある程度の説明はなされるものの、 いざ上演されてみると予想とは違った使われ方をしていたりするのもよかったと思います。

要所要所での選択肢を間違えると発生するバッドエンドも、 なかなか落ちが聞いていていい清涼剤になりました。

もし今回のレビューで発言したことに共感していただける方がおられましたら、 僕も可能な限り尽力させていただきますので、メールを下さい。


DNA
▼プレイ概要

プレイ時間:約1時間
状況:2パターンのエンディングまで済み

▼はじめに

さてさてさてさて。 この作品は何ていうか一時間限りの暇つぶしに遊んでみる?程度の物だと思う。 ゲームとしてみた場合 何度も繰り返し遊ぶ物でもないし 熱中できる何かがあるわけでもないと感じた。 恐らくはアプローチの仕方を変えないとレビューなんて無理だろーな。 なんて思いながら最後まで一通りプレイした。 正直、俺の嫌いなタイプのツクールゲー・・・すなわちネタ物の域を出ていないのだけど それでも、この作品独自の「おぉ。やるな。」と思わせる部分が意外なほど多くあるので その辺に突っ込んで話をしてみよう。

▼面白さの分析:ネタの中身

この作品のおおまかなネタの中身は次の通り。 プレイヤーが入力した文字(台詞)を元にゲーム内での舞台が繰り広げられる。 マヌケな台詞を入力したら、そのまんまマヌケな内容の舞台になるわけだ。 このゲームの凄いところはココにある。 例えそれが意味不明な台詞であろーと前後の流れを無視した物であろーと 入力した通りの台詞での舞台になる。 この容赦のない素直さがファーストプレイに限り ある種の面白さを提供してくれている。 詳しく見てみよう。

▼面白さの分析:理不尽で純粋だからこそ

この作品の良いところは、台詞入力時の状況が全く読めない点にある。 ゲームの節々で台詞の入力を求められるのだが その台詞が発せられるであろうシチュエーションの説明がほとんどないのだ。 ファーストプレイ時にプレイヤーに与えられる情報は舞台のあらすじ程度の物で限りなく 少ないと言える。 そこでプレイヤーは、今から入力する台詞が発せられるであろうシチュエーションを想定 して 真面目に、あるいはボケを狙って台詞を入力することになる。 かなり理不尽な進行だが、ここでポイントとなるのは 「その理不尽さにはプレイヤーにシチュエーションを想定させる」 という働きがあることだ。 実際にプレイしてみればわかるが その想定されたシチュエーションは ある場合には見事に的中し ある場合には見事に裏切られることになる。 ここでプレイヤーの心理的に以下の状況が発生する。

・想定が的中し真面目に台詞を入力していた場合

してやったり感、あるいはヤッパリ感。 どちらにせよプレイヤーの心に影響を与えることができる。

・想定が的中しボケ狙いの台詞を入力していた場合。

してやったり感、あるいはヤッパリ感。 どちらにせよプレイヤーの心に影響を与えることができる。

・想定が裏切られ真面目な台詞を入力していた場合。

どー考えてもズレた台詞になってしまい 舞台の真面目さとシリアスさも相まって滑稽な物になってしまう。 これが結構面白い。 プレイヤーが真面目に入力した(はずの)台詞が どー考えてボケにしか受け取れないという実に良い感じに裏切られるわけだ。 かなり大きなインパクトをプレイヤーに与えることが出来ている。

・想定が裏切られボケ狙いの台詞を入力していた場合。

狙い通りのボケにはならないのだが 入力文字列の短さと舞台のシンプルさのおかげで 結構ボケを拾ってくれる展開になりやすい。 なんとなくボケとしての辻褄が合ってるように感じやすいのだ。 これが作者の狙い通りなら恐ろしいセンスだ。 恐らくこのパターンになった時が 最もプレイヤーに心理的インパクトを与えるのではなかろうか。 ツクールの仕様上、文字入力が6文字までで漢字不可という点が シンプルさを加速させている点も見逃せない。 仕様を上手く使ったと言えるだろう。

まーそんな訳で 想定が的中した時よりは裏切られた時の方が面白い展開になりやすい。 この作品の恐ろしいところは 想定が裏切られやすいよう台詞入力時にプレイヤーにほとんど情報を与えていない点だ。 まさに作者の計算通りといったところか。 おかげで自分が入力した台詞の使いどころに一喜一憂しながら舞台を楽しむことができ る。

▼面白さの分析:真面目でシリアスだからこそ

この作品を遊んでみればわかるが、舞台の本来(?)の内容は真面目でシリアスなもの だ。 舞台のシナリオをよりシリアスに感じさせるために ゲーム本来のシナリオが良い働きをしていて より舞台に真面目さとシリアスさを加味する事に成功している。 だからこそ入力した台詞がズレた時のインパクトは大きく滑稽で楽しめる物になってい る。 作品の楽しさを十二分に引き出すための工夫がここにある。 これだからネタ物は恐ろしい。

▼おわりに

全てが計算されているように感じたので個人的に評価は高い。ただし一発物としてだが。 作品の性質上セカンドプレイ以降では面白さが激減するが、こればっかりは仕方がない か。 ゆえに最初に書いたように時間潰しに遊ぶには丁度良い。

で。だ。

この作品で制作者として最も注目すべき点は
「面白さを引き出すために工夫する」
という点に尽きる。 自身がツクろうとしている、作品の面白さを理解していなければ工夫なんて出来ない。 その上それをプレイヤーにより深く伝えるためにはどうすればよいか? というアプローチがなければ質は高まらない。 この作品は、それが上手くできていると感じた。(深読みしすぎかもしれないけどねw)

以上でした♪ヽ(゜−゜)ノ


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